走行時、搭乗者に加わる慣性力を人の感性に合わせてコントロールするが、縦方向の運動は前のページで述べたとおりで、 ここでは ステアリング操作で行う横方向の運動α の具体例について記述する。
横方向だけの運動のレーンチェンジ、進路変更、円旋回の具体的なαの方程式を作成する。
作成したαの式を車両逆モデルに与えてシミュレーションを行い、ヒトでは運転の困難な強いアンダーステア車のリバースステア時のハンドル捌きを
リバースステアのページで明らかにする。
下図に示す車の運動方程式の右辺一項目の α の運動方程式を走行環境ごとに作成する。
1-1 レーンチェンジを行う人の逆モデル例
レーンチェンジは横方向だけの運動と考え、横方向にレーン幅だけ移動、移動後の横方向速度はゼロ。
に当たる人の感覚に沿った横方向加速度α(t)の運動は
(5)
Lはレーン幅、Tc、ε,εεは微少な定数
この場合ハンドル操作が必要なので、y”の加速度を発生させる操舵角δを算出する車両運動逆モデルが必要になる。
(6)
式(6)に式(5)の y” を代入したものがレーンチェンジのドライバモデル。
1-2 進路変更の人の逆モデル例(図3)
斜め方向からの横向きの力を考えて、角度γ(ガンマ)だけ偏向した偏向路と車両の距離をS、偏向開始位置X1
、現在位置(y、x)として、γだけ偏向した進路の式を、
変形すると、
この直線と、車両位置(x、y)の距離Sは、
変形して符号を変えて(このままでは原点(0.0)側の距離Sが負になっているので)、
S’は
横加速度S”を得る求心加速度αの関係は、αとS”のなす角が π-γ-θ-β となり、
変形して、
符号をCarSimと合わせるため、
S”発生に必要なαは、
とすると、
人の運動αは
(7)
車両運動逆モデルにこのαを与えた
が偏向のドライバモデル。
1-3 円旋回の人の逆モデル例(図4)
ヨー方向の運動をコントロールして進路を維持している場合の公転運動の角速度ψ’を見込む、人の感覚に沿った角加速度ψ”の運動は
(8)
ターゲットをψ’Tとして、立ち上がりを緩やかにするよう Exp-1 を加えて、
道路内側半径をR0、車と旋回中心の距離をL、旋回目標半径Rtとすると、車両位置からR0の円弧に接線を引いて、接点を見込む角度φが、旋回目標半径Rtの位置からR0の円弧に接線を引いた場合の接点を見込む角度φTが一致するようにコントロールして、走行位置を半径Rtの位置に安定させる。
(9)
(10)
公転のヨー角速度ψ’は横加速度αに対して α=vψ’(v:速度)の関係があるので、このαを車両逆モデルに与えた
(11)
が円旋回のドライバモデル。
1-4 カーブ進入走行の人の逆モデル例(図5)
実際の運転では、いきなり円旋回するのでは無く、カーブ直前でカーブの方向に進路変更して、カーブに入ってから円旋回するので、図5に模式図で示すように、 1-2節の進路変更 + 1-3節の円旋回 のドライバモデルを直列につないだ形になる。
2. ドライバモデルによる運転シミュレーション
ドライバモデルはMATLAB/Simulink、車両はCarSimを使用。
2-1 レーンチェンジ例(動画はページ先頭)
Lwidth=3.5 Tc=0.1 a=100 p=1.05 ε=0.25
正確に3.5mのレーンチェンジを時速200km/h で滑らかに実施しているのが図6から分かる。
このページの最後にレーンチェンジの詳しいグラフデータあります。
2-2 左へ150度進路変更例
前方の150度偏向する道路に180km/hで進入(図7)。
2-3 円旋回例
150km/hでいきなり300R<定常円旋回に入った場合のシミュレーション結果を図8
2-4 カーブ進入走行例(4ページに動画)
カーブ進入前の100m助走で、カーブ方向に進路変更し、求心加速度1Gでカーブに進入
2-5 4WS車のレーンチェンジ (動画はページ先頭)
同相4WSの逆モデルは、平面運動の運動方程式と車体の回転の運動方程式を連立して前輪舵角δf、後輪舵角δrについて解く。横滑り角β項省略、ヨーレートω寄与拡大修正。
図11に示すように車体を進行方向と平行のまま0.8g程度のレーンチェンジを200km/h で滑らかに実行している。